徒然趣味

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時がさかしまに流れる街 待ってよの感想<ネタバレ注意>

今回は、蜂須賀敬明の小説 待ってよの感想を書いていきたいと思います。
ネタバレが沢山ありますので苦手な方はブラウザバックを推奨します。







待ってよ (文春文庫)

待ってよ (文春文庫)














~あらすじ~

主人公のビリーがやってきたのは田舎の街。
ニンジャ・ウィザードと呼ばれるビリーは有名なマジシャンで、マジシャンを披露すると共に田舎の海を見るために訪れた。
そんな彼を案内するのは妊婦のこうこ。旦那はいないようで3ヶ月の腹を抱えている。
街には田舎に似つかわしくない時計塔があり、若者が闊歩していた。
そんな彼らと交流している時、こうこが産まれそうだと言った。突然のことに焦るビリーだったが街の人達はこうこの出産よりもビリーの反応に驚いていた。
街の人達はこうこを墓場に連れていき、墓石を退き始めた。
街の人達に墓石を退きるのを辞めるよう訴えたビリーに街の人達は手伝うように頼む。
こうこの苦しげな表情、街の人達の必死な様子に気持ち悪さを感じてしまったビリーは墓石の下の人が生きていることに気づいた。
必死に墓石の下の人を助け出すとそこに居たのは死にかけの老婆で、こうこはありさと言った。
ありさという老婆はこうこの娘だった。
こうこの腹の中の子供がありさだったのだ。











~感想~

生まれた老人が時が経つにつれて若返っていき、子供を作り、やがて赤ん坊になって娘の母胎に帰り再び墓の下から生まれる。奇妙でしかないこの街のあり方に面白さを感じました。
ですが、最初は老婆であるありさの面倒をみることの大変さにとてもクローズアップされているので面白いというより、この街の人の大変さを思い知らされました。
次第に若くなっていくので、普通では初老と言われる時になると学校に通うことになり今まで覚えていたことを学び直していくということが新鮮でした。

様々な人達が出てきますが、私はやはりビリーとこうことありさの関係がよかったと思いました。

ビリーは、とても口がうまく皮肉屋ですが、この街唯一の私たちも同じ世界の人なので、彼の不信感に非常に共感出来ました。
さかしまに流れる人達の前でもマジシャンとして楽しませ、驚かせる彼の姿はとてもかっこいいと思います。

こうこは、この街らしくない許容が大きい女性で、ビリーが困惑し気が動転していても理解を示してくれる女性です。彼女がいなければビリーは街には残らなかっただろうと思います。
非常にモテる女性で、アプローチもさんざん受けてきたようですが、その断る理由も彼女ならではで何となく理解出来ました。若返りを早めないよう努力する彼女は美しいと思います。

ありさは、こうこの娘でとても人見知りで引っ込み思案でしたが言葉を覚えるのは早く、ビリーのマジックの力に誰よりも好奇心を持った人でした。この街を出て行く決心をしてマジシャンとして活躍するのが純粋にすごいと思います。

ビリーとこうことありさの3人とこの街の時間の流れに身を任せていくのは衝撃の連続でしたが、最後を読んでみるとこの作品を読んでよかったと思えました。

登場人物たちの祖母や祖父が登場しなかったので、親が子に還り、子が親に還るという現象はきっと1度だけなのかどうかが気になりました。

続編というか、今後のこの街がどうなっていくのか知りたくなった作品でした。