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MOTHER3の原点? 悪童日記の感想(ネタバレ注意!)

今回はアゴタ・クリストフ悪童日記の感想を書いていきたいと思います。
ネタバレが苦手な人はブラウザバックを推奨します。


大まかなあらすじ
戦争が激しさを増し、ぼくら双子は母の元を離れ、おばあちゃんの家に疎開することになった。
その日からぼくらの過酷な日々が始まった。
人間の醜さや悲しさ、不条理。
ぼくらは独自のルールに従って日記に記す。


感想
悪童日記という作品を知ったのは、糸井重里のゲームで有名なMOTHERシリーズのひとつ、MOTHER3というゲームでした。
私はMOTHERはもちろんMOTHER3が好きだったので、糸井重里さんがすごくインスピレーションをうけたというこの小説に興味を持ったのです。
MOTHER3の主人公、リュカと兄のクラウスは悪童日記からつけられた名前だとされています。
しかし、シナリオはとても似ているのかといわれるとそうでもありません。
MOTHER3を好きならば読んでみてほしい、いや読まなくていいという複雑な気持ちさせる小説でした。
でも読んだことでわかったことがあります。
それはこの本を読めばMOTHER3という作品がうまれた理由が、なんとなく理解出来るということです。
悪童日記の感想について述べていきたいと思います。
双子であるぼくらは両親の手から離れて祖母の家に行くことで悪意に満ちた生活を送ることになります。
暴力と罵声を浴びせる祖母、家に住む大尉従卒、兎唇の隣人の少女、ゲイの将校、司祭……思いつく限りでもかなり個性的に満ちています。
彼らは理不尽で不条理で悪意的です。
それは時代が悪いのか、戦争という状況が悪いのかは分かりませんが、性格がいいなんて人は出てこないし、優しくなんてありません。
でも、そこがこの作品の中で唯一安心できるところです。
ただ優しいだけの人なんていないと感じることが出来ます。
ぼくらに愛を与えてくれた母さんは父親ではない男と再婚して連れ戻しに来るし、父親も生きるためにぼくらを利用しようとしてきます。
それが悪いことなのかといわれると、そんなことはありません。両親の一側面でしかないのです。
ぼくらは優しくて愛を与えてくれた両親のことをしっかり覚えているし、心の支えにしてきました。だけどぼくらは母親を見捨てるし、父親を踏み台にするのです。
私はぼくらがしたことが悪いことのように思えませんでした。この双子ならやるだろうなと思いました。実際、ぼくらは生きるために思考し続けた結果こうなったのです。
最初はよく思っていなかったであろう罵詈雑言を言ってくる祖母との別れのほうが、心に響いてくるようなぼくらの心に刻み込まれたような気がするのです。
両親たちよりもおばあちゃんがぼくらを理解しているという訳ではなく、ぼくらをこういう風に育てたのがおばあちゃんだからだと思うのですが。
善性と悪性という二面性を強く感じさせる小説なのだと感じました。

MOTHER3でもよく感じられる要素だと思います。可愛いおさるを虐めていた敵のヨゼフは、部屋のネズミにはとっても良くしていましたし、ラスボスで全ての元凶であるポーキーは主人公達を苦しめ続け、面白可笑しく主人公達で遊び放題し続けましたが、前作の主人公で幼馴染であるネスのヨーヨーを大切に保管しつづけ、そのネスたちの冒険を映画館で上映し続けています。
そんな彼らは主人公の母親を殺す要因を作り、兄は母の敵討ちに行き行方不明、そんな兄を探すため父親は主人公と向き合わず育児放棄をするという結果を生み出します。
ポーキーは悪の塊でしかありませんが、みんながどう考えているかなんてどうしたいだなんて分からないのです。
何が正しくて誤りなのか。そんな物差しでは彼らの心中も彼ら自身のことも推し量ることはできないのだということを学びました。

この悪童日記という作品はとても読んでいて興味深く面白いと感じさせてくれますが 、誰にでもおすすめできる小説ではないと感じました。
性描写も挟むので18歳以上推奨です。
かなりショッキングな出来事が重なりますので、鬱やグロテスクな描写に抵抗がある人にはおすすめできません。
ただこの無垢な残酷性はぜひ大人の童話として読んでもらいたい作品でもあります。
興味を持った人は読んでみてください。
シリーズものなので機会があれば続きを読みたいと思います。

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

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